星川杉山神社

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宮司さんのおはなし 第21回

明けましておめでとうございます。

辰年から巳年へ、また新たな一年が始まりました。“皆で仲良くお正月を祝う睦(び)月”である1月は、家族で初詣へ出かけたり年賀状で旧交を温めたりと、明るく賑やかな触れ合いの増える月です。みなさんは、どんなお正月を過ごされましたでしょうか。

私にとっては、十干と十二支の組み合わせである干支についてお話しすることが、ここ数年の恒例となりました。今年の干支は『癸巳(ミズノトミ)』。『癸(ミズノト)』は昨年の『壬(ミズノエ)』と兄弟のような関係にあり、“水”との深い関わりを持つ文字です。では、この『癸』と『巳』を組み合わせた年はどんな1年になるのか、お話ししていきましょう。

まず『癸』についてですが、これは“×”のような形の象形文字から生まれた字とされています。語源には二通りの見方があり、ひとつは突いたり刺したりする武器である矛(ホコ)を表すというもの。この矛は突端部分が四方へ開いているのでどの方向にも突くことができ、回転させれば防御に用いることもできます。もうひとつは“水が四方から中心へ集まってくる”様子を描いた形だという見方で、十干の役割のひとつである季節の表示と結びついて「冬枯れの荒野に、四方から流れ込む小川のせせらぎ全体を見渡す」という意味を持つとされました。さらに『癸』の“癶(ハツカシラ)”は人の両足を左右に開いた形を表すともいわれ、登る、発つなど足に関係する漢字に使われる冠として発展していきます。このように『癸』には幾通りもの意味があるのですが、コンパスのように回転する、四方を見渡す、足を使う、というところから、総合して“測る”という意味を持つ、というのが定説となっています。

『癸』が持つ“測る”という意味は、物質の数値から物事の善悪へと幅を広げていき、やがて“規則”や“秩序”といった判断基準を指すようになります。つまり『癸』の年は「草木の枯れ果てた原野に、生命の源である水だけが蕩々と流れている。水の力を活かして草木を再生させ原野を切り開いていくためには、天地の法則を元にした正しい判断を下すことが何よりも重要」という意味を持つと考えられるわけです。国内外に難しい問題を多く抱え、再び政権交代が行われた現在の日本は、まさにこうした状況に置かれているといえるでしょう。判断の間違いが混乱や争いごとを招きやすい年ですから、私たちひとりひとりが物事を正しく見る目を持ち、人としてどう生きるべきかをきちんと考えることが大切です。

一方、『巳』の文字にも“冬眠から冷めたヘビが地表に這い出す形”と“頭と身体が出来る途上の胎児の形”という二通りの語源があります。ただ、こちらは新たな生命が外へ出ようとする姿を表す文字だという点で共通しているので、「それまでのあり方に終わりを告げた命が、春の到来とともに動き出す」という意味を持っていると解釈できます。

これらのことから『癸』と『巳』の組み合わせの年には“修正”を行うことが必要であることがわかります。これまでの誤った考え方を改め、人としての正しい道に基づく原点に戻って再スタートを切ることができるか否か。それによって1年が明るくも暗くもなりますので、ある意味では試練の年といえるかもしれません。政治の動向も気になりますが、私たちはまず、自分たちの家庭や職場で目に付く小さなことから皆で協力して直していきたいものです。そして“何が正しいか”を判断できる次世代を育てるために、大人がきちんと考え、決断する姿を見せていきましょう。

今年は伊勢神宮において式年遷宮が行われる年でもあります。私もまた神さまにご奉仕する者としての原点に戻って、みなさんに何を伝えるべきかをよく考え、自らの役割を測っていきたいと思います。

みなさんにとって、『癸巳』の2013年が明るい1年となりますように。

本年も、よろしくお願い申し上げます。

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