宮司さんのおはなし 第20回
今年もまた、氏子さんのお家に新年の御札をお届けする季節となりました。毎年、2週間くらいかけて各お家を訪ねます。年齢のせいか、最近では日に5~6時間も歩くと疲れを感じるようになりました。ここ数年は若い神職と一緒に回ることも多いのですが、この役目を果たせなくなったら私も引退かな…などと神社へ戻る坂道を登りながらふと考えたりする年の瀬です。
今年、当社では一昨年の大震災で受けた破損箇所の修復をすべて終え、6月の奉告祭をもって一段落といたしました。氏子崇敬者の方々からのご寄進とご厚意に改めて感謝するとともに、定期的な安全性のチェックを怠らないよう気を引き締めているところです。また修復が終わったのちにも、お参りに来られた方々からたくさんの励ましをいただきました。「今後のために」と奉納金を納めてくださる方もいらっしゃって、みなさんが関心を持って協力してくださることのありがたさを実感しています。
私もまた、被災された方々に対してできる限りの援助をしたいと思いながら1年を過ごしてきました。当社は横浜にありますが、ご奉仕ではさまざまな地域の方とお話しする機会に恵まれます。福島や茨城の方のお話を伺うと、震災から1年9カ月経ついまでも瓦礫が片付かない、就職が決まらない、政府からの援助が出ない等々、解決されない問題が数多く残っていることがわかります。被災地の方は団結して頑張っていらっしゃいます。他の地域の方も思いやりと助け合いの心で援助したいと思っています。双方をうまく結びつけ、復興をスピードアップさせていくのは、国政に携わる人たちの責務ではないでしょうか。
こうした団結力や、他人の気持ちを思いやれる温かさと助け合いの気持ちは日本人ならではの美徳です。そしてこの美徳は、子供の頃からの習慣や教育によって育まれます。第13回の『おはなし』で当社の七五三詣に関するお話をしましたが、わずか3歳の子供でも、年上の者がきちんと接し、手本を見せれば、正しい行動の仕方をその場で覚えます。私はいつも七五三式の際に「なぜお参りするのか」を子供たちに説明するのですが、今年はそれと合わせてひとりひとりに簡単な質問をしてみました。たとえば「朝起きたときには、お父さんお母さんに何とおっしゃいますか?」「寝るときには?」「お食事のときには?」。すると最初はもじもじしていた3歳の子供も、年長のお姉さんお兄さんが「おはようございます!」「おやすみなさい!」「いただきます!」と答えるのを見て、自らもきちんと答えるようになるのです。当社ではお子さんたちを社殿の前列に、ご家族をその後ろにと親と子の座る場所を分けて式を行いますが、初めはご家族と離れて不安そうにしていたお子さんも、最後に風船を渡すときには自分の好きな色をはっきりと答えてくれるようになります。
子供はみな素直で明るい心を持っています。私は今年の七五三式で、子供はみな平等に健やかだと改めて感じました。この健やかさをいかに伸ばしていくか、これはご家族が担う重要な役割です。そこでご家族には「日本人が持つ礼儀正しさや思いやり、誇りの心を日々の積み重ねによって身につけさせてほしい」というお話をさせていただきました。今後も、小さな神社だからこそできるこうした働きかけを、丁寧に続けていきたいと考えています。
さて、来年は『癸巳(ミズノトミ)』。今年以上に“正しい判断”が試される年となります。日本という国に生まれた者として、何を考え、どう行動を起こしていくか。このお話は新年早々にいたしましょう。
急激に気温の下がった12月、大雪や寒気に苦労されている方も多いことと思います。体調を崩されないよう留意なさって、健やかな歳末をお過ごしください。すべての方が、明るく温かな気持ちで新年をお迎えできますよう、心よりお祈り申し上げます。