宮司さんのおはなし 第14回
12月に入り、本格的な寒さを感じる日が多くなってまいりました。今年一年を振り返ってみると、やはり3月の大震災のことが真っ先に思い起こされます。日本中の人たちが、人間の力ではとても太刀打ちできない自然の脅威を肌で感じ、復興への努力を続けた年だったのではないでしょうか。
私が奉仕する杉山神社でも、損壊した鳥居や灯籠、玉垣などの修復を少しずつ進めてまいりました。おかげさまで氏子崇敬者の方々より多くのお力添えをいただくことができ、鳥居と灯籠は年内に、玉垣については来年春頃をめどに工事を終える見通しです。
なにしろ200年にも及ぶ建造物ばかりの神社ですから、工事においては今後の危険回避策を考えて根本的な改修と造営を行う必要がありました。そこで、これを機に境内の様相を見直し、これまで参拝される方々に不便をおかけしていた部分についても改善することにしました。
まず大震災で崩れた鳥居などの建造物にはすべて、基礎の部分に太いボルトを入れて耐震性を高めています。これはスパイラル工法と呼ばれるもので、神社で大々的に取り入れるのは当社が初めてなのだとか。その分費用もかかるので最初は頭を悩ませましたが、多くの方々からのご寄進と励ましをいただいて実現させることができました。
この耐震ボルトは、社殿を囲む玉垣の1本1本にも入れる予定です。同時に、拝殿へ向かうスロープを以前よりも緩やかにし、車椅子でも無理なく進めるよう改善しました。スロープの勾配は駅や病院といった公的施設でのバリアフリー基準を満たす、1/14という角度です。最近では老人保健施設や介護福祉施設から団体でお参りにいらっしゃる方々も多いので、今後は以前よりも足腰の負担を軽くしてさしあげられるのではと思っています。
また灯籠にはこれまで電気を使っていなかったのですが、今回の改修を機にLED電球を入れることにしました。陽の落ちるのが早い季節ですから、これからお参りにいらっしゃる方々にはその利便性をより実感していただけるのではないでしょうか。
こうして、最新技術を取り入れることによって安全性を高めながらも、歴史ある景観を壊すことなく境内を修復することが叶いました。お力添えをいただいた方々には深い感謝の念で一杯です。こうしたご厚意に応えるためにも、今後は人々とより密接なつながりを持ち、心の支えとなれる神社にしていきたいと考えています。
被災地にはいまだいくつもの課題が残されています。みなさんや、みなさんと関わる多くの方々も、今年は苦労や心配の絶えない一年だったことでしょう。けれど、困難を乗り越えようとする努力は、いつか必ず実るものです。
ともに、一歩ずつ前進していきましょう。すべての方が、明るく希望に満ちた新年をお迎えできますよう、心よりお祈り申し上げます。