宮司さんのおはなし 第8回
今年の夏は例年になく猛暑の日々が続いていましたが、9月に入って少しずつ涼を感じる機会も増えてきました。陽が落ちる頃になると、境内の木陰を吹く風にも秋の気配が漂っています。
さて星川杉山神社では、9月の18、19日に『例大祭』を行います。例大祭は神社にとって最も重要な祭祀とされるものですが、そう言ってもピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は、みなさんと密接な関わりを持っているにも関わらず意外に知られていない、『例大祭』の意義と目的についてお話ししたいと思います。
私たち神職に携わる者は普段、日供祭(ニックサイ)や月次祭(ツキナミサイ)といった祭祀を通して神さまにご奉仕しています。みなさんのお家でも神棚へのお供え物を毎日替えたり、毎月1日と15日には新しい榊をご用意したりということをされると思いますが、そうした最も基本的なお祀りが日供祭や月次祭であると考えていただければいいでしょう。
こうしたお祀りをはじめとして、神社で行う祭祀には小祭式、中祭式、大祭式といった分類があり、内容と目的によって規模が大きくなっていきます。『例大祭』は、いわばその頂点に位置する大祭式。例大祭の“例”の文字は“ためし”とも読み、これには“整った決まり”という意味があることから、年に一度、お祀りしている神さまに縁の深い決まった日に行うことを恒例としています。神さまからの日頃のご加護に感謝し、そのご神徳を称えることを最大の目的にしているため、お供え物にもお米やお酒、お塩のほかに海のものや山のもの、乾物、果物、お菓子など、さまざまなものが用意されます。
このように例大祭は神社をあげて行う大きなお祀りなのですが、お正月や節分に行う祭祀のように一般の方が参列されることはあまりありません。神社での儀式には地域の代表者のみが参列し、みなさんには神さまの御霊をお移しした『神酒所』にお参りしていただきます。またお神輿や山車を出して、町の発展やそこに住まう人々の暮らしぶりを神さまにご覧いただくということも行います。
こうしたことから多くの町では、例大祭の時期に合わせてにぎやかな縁日が開かれるようになりました。年に一度のこの“お祭り”を楽しみにされている方もいらっしゃることでしょう。ただ間違えてはいけないのは、このお祭りは本来、人々が露店などを楽しむためのものではなく、神さまを称えるためのものだということです。ワッショイワッショイと担ぐお神輿も、神さまをお乗せしているのだという意識を持って担ぐのでなければ担ぐ意味がありません。どんなお祭りも元来は、神さまとのつながりを深め、神事を通して人と人との結束を強めるために催されるものなのです。
例大祭が行われる時期には、お祀りしている神さまのお力が非常に強まるといわれています。当社をはじめ9月には多くの神社で例大祭が行われますので、近くにお住まいの方はぜひこの日に神酒所へお参りされるといいでしょう。そしてお神輿や山車に神さまの存在を感じ、そのお力をいただいて、ご自身の精気を養っていただけたらと思います。